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北本自然観察公園 自然観察記録 2004年11月

2005年1月4日更新
                                           埼玉県自然学習センター


【2004年11月30日(火)】
○ニホンミツバチの巣付近の草原で、ショウリョウバッタを見ました。ショウリョウバッタは明るい草原に棲み、イネ科を中心とした種々の植物を食べます。色は緑色型、褐色型、混合型の3タイプがありますが、いずれも草の葉や土などに似た保護色です。体長は40〜80mmですが、メスはオスより二回りほど大きく日本最大のバッタです。小型のものはオンブバッタに似ていますが、こちらのほうがよく飛びます。小型のオスは、飛ぶときに「キチキチ」と音を立てて飛ぶため、キチキチバッタとも呼ばれます。一方メスは、足の先を持つと米をつくような独特の動きをするため、コメツキバッタとも呼ばれます。ショウリョウバッタの名前の由来は、お盆(一部の地方では精霊祭という)の頃から、よくその姿を見ることができるからだそうです。

【2004年11月28日(日)】
○ビオトープ見本園入口にあるハンノキの実が紅紫色に色づいてきました。柄をもった2cmほどの大きさの楕円形で、堅い木質の鱗片で覆われています。果期は10〜11月ですが、花期は1〜3月で、葉が展開しないうちに花を咲かせる、春を告げる木の一つです。
ハンノキは水辺や湿地に見られる湿地林を構成する落葉樹で、昔は田の畦道に植えられて、イネをほす柱(稲架木(はさぎ))として使われました。また、ハンノキは埼玉県の蝶として指定されている「ミドリシジミ」にとっては大事な木です。ミドリシジミはハンノキに卵をうみつけ、越冬し、ハンノキの葉を食べて育ち、葉の一部を折り曲げて簡単な巣を作り、木の根元で蛹になります。そして6〜7月にチョウとなります。たくさんのミドリシジミが飛び交う環境を保全する願いがこめられて、センターの展示室中央部に、シンボルツリーとして、大きなハンノキがあります。

【2004年11月27日(土)】
○センター西側の園路際に、ヤツデが白色の丸い花を咲かせています。本州の中部以南に分布し、主に暖地の海岸の樹間などに生育する常緑低木で、野生のものはほとんどありません。樹高は3mほどで、日陰を好みます。葉の大きさは30cm位で、7〜11に深く割れていますが、8裂が多いようです。そのため数字の8と人間の手に見立てて名前が付けられたそうです。また、別名はその形から天狗の羽団扇といいます。ヤツデの花は雄花と雌花の区別が無く、同じ花が日が経つにつれ雄から雌に変わるという不思議な花です。なお、ヤツデの花は昆虫の少ない寒い時期に開花するので、昆虫を呼び寄せるため特に甘い蜜を出します。葡萄や柿の果実の糖度は15〜20ですが、ヤツデの花の糖度はなんと50以上です。

【2004年11月26日(金)】
○センターの敷地内には何本かのクスノキがあります。5から6月頃、クリーム色で房状の小さな花を咲かせていました。現在は、緑の丸い実が熟して、徐々に黒色に変わりつつあります。クスノキは、日本で一番大きくなる樹木のひとつです。そのためか、神社の神木になっているものも多いようです。また、神社の柱や土台にもよく使われています。クスノキから、昔は防虫剤の樟脳(しょうのう)を取っていました。日本自生のクスノキは樟で、間違いやすい楠は中国四川省にあるタブノキ属の植物で、もともと日本には自生しません。

【2004年11月25日(木)】
○公園内各所で、カナムグラが実を付けています。カナムグラは1年草のツル性植物で、雌雄異株です。紫色の花を付けていましたが、これは雌花序です。ビールの苦味の原料であるホップの近縁種で、花の外見も似ていますが、苦味の成分であるルプリンはありません。雄花序は緑色であまり目立ちません。種子は丸っこく、アリの好きなエライオソームという物質をつけることで、アリにより種子散布されます。日本全土に分布し、道端や荒地に生育しています。高さ60〜100cmで、ヤブを代表するツル草です。名前の由来ですが、ツルが強靱であることを鉄にたとえたことと、ムグラとは大いに繁るという意味からです。別名はヤエムグラといいます。花粉症の原因物質の一つとされ、農作業の嫌われものです。

【2004年11月23日(火)】
○11月上旬に来園者が公園内のクスノキの葉に止まっている変わったカメムシを発見し、写真撮影をしました。図鑑で調べたり、埼玉昆虫談話会のメンバーに見てもらったところ、ミナミトゲヘリカメムシと確認されました。ミナミトゲヘリカメムシは、中国南東部を原産とし、我が国では紀伊半島以西や南西諸島に分布する比較的大型のカメムシで、体長2cm前後です。全体は緑ががった褐色ですが、体の周縁部と脚が緑色です。柑橘類の害虫で、食草はクスノキ、シロモジ、ミカンなどです。埼玉昆虫談話会によると、5年くらい前まで埼玉県では未確認でしたが、最近、所沢などで発生が確認されているとのことです。ちなみに、当公園で確認されたのは初めてです。なお、写真は寄贈していただき、展示室内に掲示してあります。

【2004年11月21日(日)】
○エドヒガン先の園路際に、幹回り約30cmのクズの巨木があります。クズは一応多年生草本ですが、長く生きたものは木本というほど太い幹を伸ばして繁茂するものもあります。非常に成長力が強く、盛夏にはツルを1日で1mほども伸ばし、10m以上になるものもあります。それにしても、幹回り約30cmのクズはあまり見たことはありません。ところで、クズの繁殖力に関しての話題です。ニューディール政策下のアメリカでこのクズの繁殖力に注目し、日本からクズを持ち込み、テネシー川流域の堤防に植え、土壌保全を図りました。作戦は見事に成功しましたが、今では逆に増えすぎて困っているそうです。なお、クズの花については9月に報告済です。

【2004年11月20日(土)】
○今日、葦原で赤色の目立つベニマシコが数羽「フィー、フィー」と鳴いているのを見ました。ベニマシコはスズメ目アトリ科の鳥で、北方から渡ってくる冬鳥です。大きさはスズメくらいです。雑木林や河原などで見ることができますが、厳冬期を迎えるとさらに見る機会が多くなります。尾が長く、翼と尾が茶色の縞模様、喉と腹部それに目の上が白色、それ以外が赤い色です。メスは地味な羽色ですが、オスは赤味を帯びて非常に目立ちます。漢字では「紅猿子」と書きます。体の色が猿の顔ように赤いところから名付けられたといわれています。

【2004年11月19日(金)】
○公園内のノイバラが直径6〜9mmの球形で紅色の果実を付けています。この実を乾燥させたものを生薬名で「営実(えいじつ)」と呼び、漢方では下剤や利尿剤などとして用いられるそうです。ノイバラは日本全土の丘陵地や山野に自生する野生バラの代表種で、2m位伸びる落葉樹です。よく枝分かれしていて、鋭いトゲがあります。イバラとは刺がある低木の総称です。別名を野バラといいますが、その名のとおり野に咲くバラの意味です。シューベルトやウェルナーの曲で歌われている「野バラ」はこのバラのことです。なお、5〜6月には、白い小型の花をたくさん咲かせていました。花は、円錐花序で、花弁は5枚、ほのかな甘い香りがします。

【2004年11月18日(木)】
○木道付近でウラナミシジミを見ました。ウラナミシジミは本州から九州にかけて分布している体長2cm位の小さなチョウです。本来は暖かい所に暮らしているチョウですが、春から秋までは世代交代を繰り返しながら北の地方へ飛んで行き、東北地方まで到達するそうです。幼虫はソラマメ、エンドウなどのマメ科のつぼみ、花、実を食べて成長します。親もマメ科植物栽培地に多く棲息しています。名前の由来は、羽の裏側に波模様があるところからだそうです。羽の表側は、オスは紫色ですが、メスは中央部だけが青色という違いがあります。

【2004年11月17日(水)】
○あずまや付近に、夏に7mmほどの星形で白色の小さな花を付けていたスズメウリが、直径1〜2cmの球形で灰白色の可愛い果実を実らせています。本州から九州に分布し、林の縁、藪、河原などやや湿った場所に生育するウリ科の一年生つる植物です。巻きヒゲを他の植物に絡みつかせて成長します。名前の由来は諸説あり、果実がカラスウリの果実に比べて繊細で小さいからとか、スズメの卵に似ているからとかいわれています。公園内でもカラスウリはよく見かけますが、スズメウリはあまり見る機会はありません。

【2004年11月16日(火)】
○今朝、高尾の池でキンクロハジロが1羽観察されました。当公園での観察は、2002年3月以来のことで、2年半振りです。カモの仲間ですが、オナガガモやカルガモよりも小振りで、スズガモによく似ていますが、冠羽があるほうがキンクロハジロです。白黒の愛嬌のある姿は、オモチャのように可愛く、まるで水辺のパンダのようです。キンクロとは金色の目の黒いカモ、ハジロとは翼の部分が白いカモの総称です。 カイツブリのように潜水して魚を捕らえたりします。潜水する時間が長いため、潜水ガモともいわれます。高尾の池は水深が浅いため、ほとんどやって来ませんが、ある程度深さのある広い水面では、よく群れで飛来し、近くでは久喜菖蒲公園の池で観察されてます。また、飛ぶときは滑走しないで一瞬に飛び立ちます。

【2004年11月14日(日)】
○今日は埼玉県の「県民の日」です。当センターでも県民の日の記念事業として「県民の日 秋の自然観察オリエンテーリング」を実施しました。少し寒い天候が影響してか、参加者は親子合わせて56名でした。実施内容は、公園内のチェックポイントを歩き、設問に回答をしてもらったり、ドングリを拾ってきて、セイタカアワダチソウを抜いた後に植えてもらいました。最後に葉っぱの「しおり」を作り、記念に持ち帰ってもらいました。ところで、木道付近に、イヌビエが紫褐色の小さな花を咲かせています。本州から沖縄に分布しているイネ科の1年草で、畑や水田などに生育している雑草です。高さ60〜120cm、葉は線形で幅10〜15mm、茎はやや平たく根元から分かれて株になっています。茎の先に10〜25cmの花穂を付けます。ヒエの仲間ですが、食用や飼料にならないので、役に立たないというところからイヌという名前が付けられています。

【2004年11月13日(土)】
○標柱16の反対側の園路際に、ヤマノイモが葉腋に小さなジャガイモのようなムカゴ(珠芽)を付けています。花期は7月〜8月で、白い花を房状に付けていました。ヤマノイモはツル性の多年草で雌雄異株です。本州以西に分布し、林縁などに生育しています。円柱形の根は自然薯とも呼ばれ食用になります。とろろ汁としてお馴染みですが、磯部揚げ、酢の物、煮付けなどにも使われます。ムカゴも食用になり、塩ゆで、唐揚げ、ムカゴ御飯などの材料となります。ヤマノイモは、根、ムカゴそれに雌株にできる果実の三種類で勢力を広げます。

【2004年11月12日(金)】
○春にはスズランのような釣鐘型の可愛らしい花を付け、花の後には黄緑色の若葉が冴えていたドウダンツツジが、現在はドウダンモミジと呼ばれる見事な紅葉を見せています。もともと、伊豆半島以西の山地に野生した日本原産のツツジで、葉がしっかりとしていて、萌芽力が強く、刈り込みにも強いところから、生垣や玉仕立て(球形に刈り込む)に適した庭木として昔から親しまれてきました。なお、古くは、ドウダンツツジではなく、トウダイツツジといわれたそうです。そのためかドウダンを漢字では「灯台」と書きますが、これは海岸の灯台ではなく、松明を燃やす「結び燈台」からきているそうです。枝がよく分かれて、その先端が結び燈台の脚に似ているためです。

【2004年11月11日(木)】
○数日前に、センター西側の林地で、自然学習指導員がスッポンタケを見つけました。写真はホワイトボードに掲示してあります。スッポンタケは梅雨期から秋にかけて、庭先や竹林、林地などに発生します。スッポンの首ように伸び出すところが命名の由来です。若い頃は白色の球形で卵のようですが、やがて割れて中から傘を出します。傘は鐘形でその表面は暗緑色の胞子を付けています。この胞子はクレバといい、悪臭がします。この悪臭につられてハエやアブが集まり、ハエなどの体に付着して胞子がまき散らされます。柄は食べることができるそうです。柄にも悪臭が付くはずですが、なぜか薄められて香水のような香りです。

【2004年11月10日(水)】
○標柱15近くの園路際に、ニシキギが鮮やかな紅葉を見せはじめています。ニシキギは、北海道から九州に分布し、山野に生育する落葉低木です。樹高は2〜3mで、葉は単葉で互生しています。若枝は緑色で、コルク形成層が線状に発達し、翼の様なものができます。コマユミとニシキギは似ていますが、コマユミにはこの翼状のものがありません。なお、5〜6月に、集散花序を出し、淡緑色の花を数個付けます。果実は朔果で、秋になると橙赤色に熟し、縦に2片に裂開し、朱色の仮種皮に包まれた種子をぶら下げます。葉は紅葉した後に散りますが、果実はしばらく付いています。紅葉が美しいためか、漢字では「錦木」と書きます。

【2004年11月9日(火)】
○今日こども公園へ向かう園路際で、ミヤマホオジロを見たという情報が寄せられました。ミヤマホオジロは、スズメ目ホオジロ科の鳥で、全長16cm位の大きさです。北海道の南部以南に分布し、丘陵や山麓の林で越冬する冬鳥です。地上に落ちている草や木の実を食料としますが、昆虫やクモなども食べます。オスは黄色い眉班や喉、黒い冠羽や過眼線が目立ちます。メスは全体的に茶褐色をしています。「チッ、チッ、チッ」と鳴きます。

【2004年11月7日(日)】
○今日は二十四節季の一つである立冬です。意味は冬が始まるということです。そういえば朝夕はめっきり涼しくなっています。ところで、エドヒガン近くにハキダメギクが小さな花を咲かせています。北アメリカ原産のキク科の帰化植物です。大正時代に東京都世田谷区経堂のハキダメ(現在の共同ゴミ捨て場)で、植物学者の牧野富太郎博士が発見し、名付けたそうです。頭花は黄色の筒状花と白い舌状花からなり、直径5mm位と小さいですが、よく見るとなかなか端正な花です。高さは10〜35cmで、窒素分の多いゴミ捨て場、空地、道端などに生育している1年草です。

【2004年11月6日(土)】
○公園内各所に、カラスウリの実が赤く色付いてきました。夏の夜に、幻想的な白いレース編みのような花を咲かせていたことは、既に報告したとおりです。5〜7cmのラクビーボールの様な形の赤い実ですが、赤くなる前は緑に白い縞模様で細長い小さなウリの様です。実の中には無数の黒い種が入っています。実は形が打ち出の小槌に似ているところから財布に入れておくと金が貯まるという話もありますが、打ち出の小槌よりカマキリの頭に似ているという人もいます。カラスウリの名前の由来については、この実をカラスが好んで食べるところからといわれています。一句紹介「烏瓜 かれなんとして朱を深む」(松本澄江)。

【2004年11月5日(金)】エドヒガンの先に、オオオナモミが全体に刺を持った1.8〜2.5cmの緑色の実を多数付けています。北米原産の帰化植物で、キク科の1年草です。湖畔や放棄畑など富栄養な場所に生育し、群生しています。1929年に岡山県で発見され、その後、古い時代に中国から渡来した小型のオナモミを駆逐する勢いで全国に勢力を広げています。高さ0.5〜2mで、葉は長い柄があって五角形です。茎の先に多数付いた実には、カギ状の刺があり、この刺で動物や人間に引っ付いて遠くまで運んでもらい勢力を伸ばします。いわゆる引っ付き虫の代表選手です。引っ付き虫であることは共通ですが、何故形も違いネバネバの粘液も出さないのにオナモミと名付けられ、メナモミと対比されるのか不明です。なお、葉や柄が褐紫色になるものが多く、実も熟すると光沢のある褐色になります。

【2004年11月3日(水)】
○あずまや付近に、ヒメジソが淡紅紫色の小さな花を咲かせています。シソ科の1年草で、日本全土に分布し、山野や林の縁、道端などに生育しています。高さ20〜60cmで、枝先に3〜7cmの花穂をまばらに付けます。花冠の長さは4mm程度で、萼片はあまり尖っていません。茎は四角、葉は対生していて薄く、菱形状卵形で縁に粗い鋸葉があります。名前の由来は、シソを小型にしたようなところからだそうです。

【2004年11月2日(火)】
○今日、エドヒガンの先の園路際で、自然学習指導員が1mを超す大きなヘビ「ジムグリ」を発見し、写真撮影をしました。写真はセンターのホワイトボードに掲示してあります。ジムグリはナミヘビ科のヘビで、北海道から種子島まで日本全土に分布しています。山地を中心に棲息し、ネズミなどの小哺乳類を捕食します。成蛇は、派手な模様もなくシックな感じの綺麗なヘビです。それに対して幼蛇は、赤地に黒の模様があって非常に目立ちます。特徴は、上唇が下唇に覆い被さっていることです。落ち葉や倒木の下などに隠れていることが多く、見る機会はそれほどないようです。また、比較的大人しいヘビで、あまり咬まないそうです。毒はありません。漢字では、「地潜り」と書きます。

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