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北本自然観察公園 自然観察記録 2004年6月 |
2004年8月10日更新
埼玉県自然学習センター
【2004年6月30日(水)】
○八ッ橋際に、ヒメガマが茶褐色の筒状の穂を付けています。穂や葉が細く、ガマより全体が小型なためヒメガマといわれるようになったそうです。また、ガマやコガマと異なり、雄花と雌花が少し離れて付き、茎に二つの穂があるように見えるため、区別は容易です。果実の毛は綿の代用に、葉は篭やムシロ等の材料に用いられます。花粉は漢方薬として使われます。以上、ガマ、コガマ、ヒメガマとも同様です。ただし、漢方の生薬で蒲黄(ホオウ)として切り傷や火傷の治療に使われるのは、ヒメガマだけと記述した書物もあるそうです。ということは、因幡の白兎はヒメガマを使ったのでしょうか。
【2004年6月29日(火)】
○今日、木道を歩いていると、黒色で腹部が青灰色のハラビロトンボが飛んでいました。
このトンボは成熟したオスです。ハラビロトンボのオスは、未成熟の黄色の体から斑紋が消えて、成熟すると黒色になり、やがて老熟すると腹部に白粉が生じます。ただし、メスは褐色味を帯びています。体長は、32〜39mmくらいで、オスメスとも腹部が平たく、幅広いですが、特にメスの腹が広いところから、その名が付いたといわれています。平地や丘陵地の池沼、湿地に棲息しています。観察記録は多いですが、最近棲息地は減ってきているようです。
【2004年6月27日(日)】
○ビオトープ見本園の入口脇で、コウゾの木が赤い実を熟させています。木イチゴに似た実ですが、口に含むとまったりとした甘い味がします。コウゾはクワ科の落葉低木で、クワの実の後を追うように実を付けます。また、コウゾの枝は簡単には折れない強靱さを持っています。その特性からか、樹皮はミツマタ、ガンピと並び、和紙の原料として用いられています。名前の由来は、「紙麻(かみそ)→かみぞ →こうぞ」という説もあります。自生のものは、ヒメコウゾといいます。
【2004年6月26日(土)】
○ふれあい橋の片側の欄干を覆うように、太い枝を横に延ばしたアカメガシワの木があります。山野に自生し、成長は早いですが、寿命は短い木です。今、枝の頂上部に黄褐色の円錐花序の花を咲かせています。アカメガシワは、木の芽(新芽)が紅赤色であるところから名付けれたといわれています。この木は有用性に富んでおり、材は建築材や器具材、キノコ栽培のほだ木などに使われています。また、樹皮は薬用、葉や種子は赤色の染料として使われます。昔は、葉をカシワと同様に、食物を包むのに使ったとの話しもあります。別名は、ゴサイバといいます。
【2004年6月25日(金)】
○今日は梅雨が戻ってきたような気候で、朝から曇っていましたが、昼前から雨が降ってきました。ところで、センター入口の右側に、ヤマモモの木があります。常緑広葉の高木で、成長すると20m位になります。暖地性で関東以西にしか分布しません。3〜4月に開花し、5月〜6月に実をつけます。ただし、雌雄異株なので、雌雄の両種が近くにないと実がつきません。センターのヤマモモも仲良く2本対になっています。今月の中旬あたりから赤く熟してきました。実はアメ玉のようで、中に大きな硬いタネがあります。少しヤニ臭く、甘酸っぱい味です。ジャムや果実酒に使われます。
【2004年6月24日(木)】
○今日、センター近くの園路上に、オオヒラタシデムシが10匹ほど群がっていました。おそらく、食料であるミミズなどの小動物の死骸を見つけたのではないかと思われます。
オオヒラタシデムシは、里から山地にかけて広く分布していて、シデムシの種類の中では、最も普通に見ることができます。大きさは約20mm程度で、体は平たく、羽に縦の筋がある、黒色の甲虫です。食料となる小動物が死ぬとすぐに群がってきて、オオヒラタシデムシの働きによって小動物の死骸は土に戻ります。
【2004年6月23日(水)】
○駐車場の入口付近にネムノキの花が咲いています。例年、梅雨明けから盛夏にかけて咲くのですが、今年は少し早いようです。名前の由来は、葉が朝開き、夜になると閉じるところから「眠の木」になったといわれています。花は、淡紅色で細い糸で作ったボンボンのようです。ネムノキの樹皮や葉は、利尿、強壮、鎮痛他の薬効があります。貝原益軒は、「この木を植えると人の怒りを除く、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記述しています。また、芭蕉は、中国の三大美人の一人である西施をネムノキに準えて、「象潟や 雨に西施が ねぶの花」の句を残しています。一方、ネムノキで思い浮かぶのは、女優の宮城まり子が創設した、肢体不自由児療護施設「ねむの木学園」がありますが、ここのスタッフの制服は、この花の色から、薄いピンク色となっています。
2004年6月18日(金)】
○高尾の森へ向かう園路際に、ヤブジラミが白色の清楚でかわいらしい花を咲かせています。道端や野原の藪に生え、高さは30〜70cm位で、長楕円で褐色の実を持っています。そして、実が熟すとカギ状の毛が衣服にシラミのように付くことが、その命名の由来だそうです。可憐な花なのに、ちょっと可哀想な気もします。似たオヤブジラミは、花弁の縁が赤紫色を帯びています。また、同じセリ科の仲間であるパセリやニンジンの花にも似ています。嫌われものの実ですが、漢方薬として強壮・強精の効能があるそうです。
【2004年6月17日(木)】
○今日も天気が良く、暖かい一日でした。暖かさにつられてか、公園内の各所にモンシロチョウが、乱舞していました。モンシロチョウは、羽が白か黄色で、中〜小型の蝶です。最もポピュラーな蝶で、全国どこにでもいて、冬以外の季節いつでも見ることができます。
モンシロチョウは、アブラナ科の植物であるキャベツ、ブロッコリーなどに卵を産み付けます。幼虫は、お馴染みのアオムシで、これらを餌としています。そのため、優しい感じの蝶にかかわらず、農業害虫になっています。なお、近縁種にスジグロシロチョウがあり、羽に黒いスジがあるのが特徴です。
【2004年6月16日(水)】
○今日の新聞や、数日前のテレビなどでホタルが取りあげられています。内容をみるとゲンジボタルに関する話題でした。そのような影響もあってか、当センターにも公園内のホタルについての問い合わせが多くなっています。しかし、残念ながら当公園内で確認できるのはヘイケボタルで、ゲンジに比べると1か月程度遅くなるようです。ちなみに、昨年は7月8日に始めて確認されています。ところで、当センターのホタル等に関するイベントも大変好評です。今年も7月24日に「夜の虫の観察会」、7月30日に「夜の自然観察オリエンテーリング」が開催されます。7月8日(木)9時から電話での受付となります。興味のある方は、是非参加をしてください。
【2004年6月15日(火)】
○公園内を散策していると、生臭い独特の臭気が強く周囲に漂ってきます。また、園路上には、15〜20cm位の細長い、白色で尾状の花が多数落ちています。満開となったクリの花が落ちはじめていたのでした。クリは雌雄同株で、雌花は花序の基部に付き、雄花は花序の先の方に付きます。クリは、虫によって受粉をする虫媒花で、花は一種の香気ある蜜を出します。そして、それを目的に昆虫が集まります。この昆虫たちによって花粉が運ばれ、受粉します。受粉の結果、クリの実ができます。ところで、この花のことを、「てんなあ」という地方もあるそうです。その形状から「天の縄」となり、それから転じたといわれています。なお、クリの木は腐りにくいため、昔は鉄道の枕木や家の土台として使われていました。
【2004年6月13日(日)】
○今日は、朝方までの雨も止み、梅雨の中休みです。気温も午後に向かって段々と上昇し、暑く感じられました。そんな中、センターのイベント「いきもの講座・トンボとヤゴ」が開催され、親子75名の参加がありました。引続き、定例の自然観察会が実施され、いきもの講座の参加者以外の参加者も加え、総計92名参加という大盛況でした。今日の観察会の目玉はトンボで、いきもの講座の参加者は早速学習の成果を生かすことができ、満足していたようでした。天候にも恵まれ、シオカラトンボ他2種類及びトンボの脱け殻が3種類ほど確認できたとのことでした。
【2004年6月12日(土)】
○センターの玄関前のクスノキを囲むように、ホタルブクロが釣鐘型の白い花を下向きに咲かせています。梅雨入り頃から咲き出しましたが、今日あたりが見頃です。名前の由来は、子供達が、この花の中に掴まえたホタルを入れるのに丁度いい大きさということから付けられたともいわれています。似た花にヤマホタルブクロがあり、一説に白い方がホタルブクロで、紫っぽい方がヤマホタルブクロといわれていますが、色の違いで区別するのは正しくありません。萼と萼の間に細い三角形のもの(副萼片)が反り返っている方がホタルブクロで、それがない方がヤマホタルブクロと区別するのが正解です。ヤマホタルブクロは、提燈花や釣鐘草ともいわれています。どちらも公園内には自生していない植物です。
【2004年6月10日(木)】
○公園内の園路際に、ドクダミの花が咲いています。4枚の白い花びらに見えるのは葉の変化したもので、花ではありません。真ん中に立っているきなこをまぶしたようなものが、何百という細かい花の集まりです。ドクダミの花は、花弁も額もありません。ドクダミは葉や茎から独特の臭いを発するため、人々からは嫌われている植物のひとつです。ドクダミの名前の由来は、「毒痛み」「毒溜め」からきたといわれています。薬草として解毒や痛み止めなどとして使われています。ドクダミといっても、毒はありません。4枚の白い花びら風の葉から、川端茅舎は「どくだみや 真昼の闇に 白十字」の句を残しています。
【2004年6月9日(水)】
○あづまや方面から高尾の森へ行く園路際の葦原の中に、オオヨシキリの巣が発見されました。オオヨシキリは、スズメよりやや大きく、顔から背中は地味な黄褐色で腹部が白色です。また、一夫多妻の鳥で、オスはメスの気を引くため一日中大きな声で、「ギョギョシ、ギョギョシ、ケシケシ、ビビツ」と鳴いています。その鳴き声から「行々子」ともいわれています。無事に雛が育つよう見守っていきましょう。
【2004年6月8日(火)】
○公園内の野原に、ヒルガオが約5cmの漏斗型で淡紅色の花を咲かせています。アサガオに似ていますが、名前のとおりアサガオが朝方に咲くのに対し、陽当たりの良い昼に開花し、夜には閉じてしまいます。また、アサガオのように種ができず、地下茎を延ばして繁殖する多年草のツル植物です。若葉は茹でれば、おひたしとして食べれますし、煎じて飲めば利尿作用があります。山口みよ子は、「雑草の 茂みに 蔓をからませて 昼顔わづか 崖下に咲く」と詠んでいます。
【2004年6月6日(日)】
○気象庁の発表によると、関東地方は今日梅雨入りしました。その雨模様の天気の中、センターのイベントである、手作り実験教室の第2回「クワの実のジャムをつくろう」が開催されました。午前、午後の2回で計60人の親子の参加がありました。公園内の野生化したクワの木から、参加者が自ら材料である実をもいできて、ジャムつくりを体験してもらいました。低い場所のクワの実がなぜか少なく、材料の確保に苦労しました。最後に、できたてのジャムを試食してもらいました。今年のジャムは例年よりもできが良く、参加者もその味に驚いていたようでした。
【2004年6月5日(土)】
○今日は、二十四節季の一つである「芒種」です。意味は(芒=イネなどの花にあるトゲのこと)田植えや雑穀の種まきををする時期、梅雨めいてくる頃ということです。ところで、 数日前に、ホトトギスのあの特徴のある大きな鳴き声「トッキョキョカキョク」が聞こえました。センター内にいた職員が直ちに外に出で確認をしようとしましたが、残念ながらその姿を確認することはできませんでした。やはり、その姿を見るのは非常にむずかしいようです。夏鳥のホトトギスの鳴き声を聞き、気候もだんだんと暖かくなってくると夏の到来ももうすぐです。一句紹介、「ホトトギス ひねもす啼いて 夏が来る」虚心。
【2004年6月4日(金)】
○今日公園内で撮影されたヒクイナと雛を背に乗せたカイツブリの写真が寄贈されました。ヒクイナについては、既に5月24日に、「キョツ、キョツ、キョツ」という特徴ある鳴き声を聞いたとの情報がありました。寄贈者によると、5月31日にあづまや付近にて偶然撮影できたとのことでした。ヒクイナはハト位の大きさで、全体が暗褐色で足と腹側の赤さが目立つクイナです。当公園内での確認は、なんと1997年以来7年ぶりです。2枚の写真は、直ちにセンター内に展示しました。
【2004年6月3日(木)】
○八ッ橋を渡った先の北里の森に、コアジサイが淡い空色の花を密集させて咲かせていましたが、今日見るとほとんど散っていました。カトレアやバラの花の豪華さと違い、また、アジサイよりずっと小型の花を控えめに咲かせていました。遠くから見るとあまり目立たなかったですが、近寄って見るとなななか素晴らしい風情をしていました。アジサイの装飾花は萼が発達していますが、コアジサイにはありません。秋には葉が黄色く色づきます。
【2004年6月2日(水)】
○先月の29日(土曜日)に、センターのイベント「テントウムシ調査」が開催されました。天候にも恵まれ、夏日のような暑さの中、親子計32名が参加し、公園内を3グループに分かれて調査を実施しました。残念ながら例年に比べ、テントウムシの種類は少なく、4種類ほどしか確認できなかったそうです。しかし、講師の先生方の熱心な指導により、参加者の反応は、ほぼ満足されたように見受けられました。
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