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北本自然観察公園 自然観察記録 2003年2月

2003年3月25日更新
                                           埼玉県自然学習センター




【2003年2月27日(木)】
○2匹のホンドタヌキが昨日のお昼頃、観察ロビー下の雑木に自分の匂いをすりつけ、縄張りを主張する「においづけ」をしながら藪の中に消えていきました。タヌキは人里の近くに暮らしている身近な哺乳類なので警戒心も薄く、キツネなどに比べて知能も低いとされていますが、その分愛嬌があり「かちかち山」や「分福茶釜」のタヌキの話になったりしています。また、俗に言う「タヌキの八畳敷」というのは、金箔を作るのに昔は小さな金の粒をタヌキのなめし革の上で叩いてのばし、金箔になるところの小さな金の粒が八畳ぐらいの広さに広がることからいわれたといいます。

【2003年2月25日(火)】
○まだ数本ですが公園の梅林のウメが咲き出しました。熊谷地方の今年のウメの咲き出しは2月15日で、昨年と比べて18日も遅い咲き出しと日本気象協会のデータは語っています。「梅四分、桜八分」といわれているように、ウメの花は四分咲き頃が一番美しく見えるといわれています。ウメは8世紀に遣唐使により中国の文化と共に日本にもたらされた中国原産の植物で、751年成立した日本最古の漢詩集「懐風藻」の中で葛野王(かどのおおきみ)が詠んだ五言詩に「梅と鶯」の詩があり、万葉の時代から伝統的な日本画の美意識である花鳥風月のパターンが無意識のうちに取り上げられていることが伺えます。また、日本の絵画史上最高傑作の一つとされる尾形光琳の「紅白梅図屏風」が、毎年2月に熱海の美術館で公開されています。

【2003年2月22日(土)】
○センター2階の観察ロビーから見ていると、モズが何かをくわえて飛んできてセンター横の藪の中に入ったと思ったら、「ピョピョピョ」とヒナが親鳥に餌をもらうときのような甘えた鳴き声が聞こえてきました。まだヒナの誕生には早いので、たぶんオスが食べ物を運んでメスにプロポーズしている場面ではないかと思いますが、藪の中で見えないのが残念です。モズが結婚相手を見つけるのは他の鳥よりも早く、2月〜3月頃だといわれています。

【2003年2月20日(木)】
○早春の陽の光をうけながら、オオイヌノフグリに続いて紫紅色のホトケノザの花がぼちぼちと咲き出しました。この花が茎を囲んで車座に咲くにはもうしばらく時間がかかります。春の七草のホトケノザはこの植物ではなく、黄色い花の「コオニタビラコ」だと言われています。ホトケノザの花には昆虫がほとんど寄りつきません。それも当然で、この花の蜜を吸うには長さ1p以上もある花の筒の下に長い口を入れなければならないからなのです。昆虫が来なくてもこの花は沢山の閉鎖花を付けるので絶えることはありません。

【2003年2月18日(火)】
○人間に一番親しみ深い野生の鳥はスズメではないかと思われます。今日もセンター前の広場に姿を見せています。スズメは人の住むところにいて人の生活の余り物を餌にして生活していますが、日本のスズメは警戒心が強く、人を容易に寄せ付けません。農耕民族にとってスズメは大切な稲を食い荒らす害鳥であり、スズメの駆除が稲作にとっての永遠の課題だったので、日本人はよほど恐ろしい仕打ちをスズメにしたものと思われます。しかし、一茶の句に「われと来て遊べや親のない雀」「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」などが知られており、農家の人に嫌われながらもスズメが身近な存在だったことを伺わせます。

【2003年2月15日(土)】
○「オジイガフグリ(オオジガフグリ)」という一風変わった呼び名を持ったスポンジ状のオオカマキリの卵が、草原の枯れたススキの茎に産み付けられていました。正式に言えば卵ではなく卵を入れてある袋、つまり卵嚢(らんのう)です。この卵嚢は細かい空気の泡を利用した羽毛の布団みたいなもので、断熱効果があり冬の寒さから卵を守ると同時に衝撃からも卵を守ります。この卵嚢の中にオオカマキリの卵が200個〜300個ぐらい入っています。日本には10種類ぐらいのカマキリがいますが、卵嚢の形は種類によってそれぞれ違った形をしています。

【2003年2月13日(木)】
○葉が落ちた雑木林の中で、常緑低木のアオキの緑の葉が目立っています。その緑の葉の付け根の部分に楕円形の緑色のままの実を多数付けいているものがあります。この公園のアオキの実は赤く熟すのが少ないようです。一般的にアオキの実が赤く熟さないのはアオキミタマバエが実に卵を産むためで、緑色の少し変形した実の中に幼虫が入っています。実は赤く色づくと鳥に食べられてしまい、卵を産み付けた虫はそれでは困るので、実が色づかないように色の変化を妨げるホルモン出します。そのため公園の中の緑のままのアオキの実は鳥に食べられないで、実の中の幼虫はめでたく成虫になることができます。

【2003年2月11日(火)】
○9日の日曜日は関東の沿岸を進んだ低気圧の影響で、明け方まで雨が降っていましたが、午後には18度と4月並みの暖かい日差しになりました。この冬の暖かい陽に誘われてキタテハやキチョウが冬眠から覚めて草原を飛んでいました。キタテハは食草のカナムグラの枯れた堆積中に潜り込んで越冬するといわれ、暖かい日には飛び回りながら羽をいっぱいに広げて冬の暖かい陽の光を浴びます。「あたたかな雨がふるなり枯葎(カレムグラ) 子規」
センターのイベントのバードウォッチングでは58人という多数の人々の参加を得て、カヤクグリやベニマシコなど30種類の鳥を観察することができました。

【2003年2月8日(土)】
○6日の朝方に小雪が舞い、朝晩は氷点下となり氷が張る寒さですが、7日の日にはニホンアカガエルがいつものミズキの下の水溜まりに3塊の卵を産んでいました。去年は5日ですので若干遅い産卵です。ゼラチン質の卵塊には500個〜1000個ぐらいの卵がありますが、水溜まりの水が凍ると卵も死滅することがあります。低地にはニホンアカガエル、山にはヤマアカガエルが棲息しており、背中の色が黄土色から赤褐色とさまざまですが、赤っぽい色をしているのでアカガエルと呼ばれています。産卵する水溜まり近くの落ち葉の下などに潜り込んで冬眠し、一時目覚めて産卵したのち再び5月ぐらいまで冬眠します。

【2003年2月6日(木)】
○朝方に小雪が降りうっすらと雪化粧した公園で、流れや池の縁などの湿地を好む風媒花のハンノキが、ひも状の雄花の穂を垂れ下げて咲いています。一般的な花とはいえない花ですが、枝の先にかんざしのようなひも状の長さ7pぐらいの雄花の穂を付け、風に揺れてまだ若葉が出ていない雑木林で大量の花粉を飛ばします。赤紫色の雌花の穂はその枝の下の方に付いています。ハンノキの根には根粒菌が付いていて空気中の窒素を固定するので肥料の少ない痩せ地でもよく育ちます。材は良質な炭が出来るので以前は重宝した有用材でした。また、幼虫がハンノキの葉を食べるミドリシジミやハンノキハムシ、実を食べるシジュウカラなどの鳥がハンノキには集まってきます。

【2003年2月4日(火)】
○今日は立春で暦の上では春ですが、まだまだ寒いです。
○公園の高尾の池は一部を残して凍結し、コガモやマガモが池のすみに追いやられ、薄氷の張った広い池の上を、セグロセキレイがすべるように我が物顔に走り回っていました。セキレイの歩き方はスズメの両足を揃えてのチョンチョン歩きと違って、両足を交互に出して歩くチョコチョコ歩きで、止まると尾羽を上下に振ります。このセキレイの尾羽の動かし方は古くから人々の注目を集めていたようで、この鳥を「しりふりどり」などと呼んでいる地方もあります。この公園で見られるセキレイはセグロセキレイ、キセキレイ、ハクセキレイの3種類ですが、セグロセキレイは日本列島でのみ棲息する特産種ですが、近年ハクセキレイに追われてその棲息地域を狭めているといわれています。

【2003年2月2日(日)】
○今日は公園を利用している団体の定例探鳥会です。観察できた鳥は以下の37種です。カワウ、ダイサギ、マガモ、コガモ、オオタカ、コジュケイ、クイナ、バン、キジバト、カワセミ、アカゲラ、コゲラ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、カヤクグリ、ルリビタキ、ジョウビタキ、アカハラ、シロハラ、ツグミ、ウグイス、エナガ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、アトリ、シメ、スズメ、ムクドリ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス。このほかにヤマシギ、アリスイ、アオゲラ、トラツグミ、カワラヒワ、ベニマシコも公園に来ています。

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