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北本自然観察公園 自然観察記録 2003年1月 |
2003年3月10日更新
埼玉県自然学習センター
【2003年1月30日(木)】
○今日は寒く、ひさびさに高尾の池が全面凍結しましたが、春はすぐそこまで来ています。園路を歩くと、日溜まりにはオオイヌノフグリの小さな宝石を散りばめたようなコバルトブルーの花があちらこちらに咲いています。ヨーロッパ原産の繁殖力の旺盛な植物ですが、コンクリートジャングルの都会では全くといっていいほど生えていません。ヨーロッパでは「聖女ヴェロニカの草」と呼ばれ、キリストがゴルタゴの刑場に向かう時、キリストの汗をふき取った聖女ヴェロニカの名が付けられています。日本に入った明治時代当初は「天人唐草」と呼ばれていましたが、いつの間にか今の名前に変わっています。
【2003年1月28日(火)】
○ベネルクス三国の小さな国の一つルクセンブルグの国鳥のキクイタダキが、公園の梅林横のヒノキの小枝に2羽来ていました。日本にいる最も小さな鳥で目方も6グラムぐらいと軽く、頭に黒いふちどりのある黄色い菊のような羽毛をいただいているのでキクイタダキと呼んでいます。菊に見立てた部分をヨーロッパでは黄金の王冠に見立てて小さいながらも鳥の王と呼ばれています。山地の針葉樹林に棲み、冬には低地のマツやスギ、ヒノキの高い梢を枝から枝に素早く移りながら餌を探しています。
【2003年1月25日(土)】
○今日はセンターのイベント「手作り実験教室・クズの根っこを食べよう」で、公園の中でクズの根を掘り採り、葛粉を採り出す作業をしました。何回もさらす必要があるため、前もって採り出した葛粉で葛湯を作り、試食してもらいましたが、10家族の25人の参加者にはで大変好評でした。
○クズは秋の七草で知られるように万葉の昔から人々に愛された有用な植物で、根は葛粉や葛根湯、蔓は葛布、葉は家畜の飼料、花は切り花と利用されてきました。しかし、葛粉や葛布を作るには大変な手間がかかるので、本物の葛粉といわれている吉野葛は奈良県榛原で、葛布は静岡県掛川で細々と伝えられているに過ぎなくなってしまいました。また、安価な輸入飼料に押されて家畜の飼料の利用もなくなり、現在ではクズは繁殖しすぎて雑草として駆除の対象になっており、衣食住の変化が有用な植物を無用な駆除すべき植物に替えてしまいました。
【2003年1月23日(木)】
○口笛に似た澄んだ鳴き声のウソは12月の中頃までは公園でよく目撃されましたが、1月に入ってからは目撃されていません。ウソは学問の神様の天神様(天満宮)すなわち菅原道真にゆかりがあり、毎年初天神の日には東京の亀戸や福岡の太宰府の天満宮では「ウソ替えの神事」が行われます。ウソと菅原道真との結びつきは、道真が海上で遭難したときウソの先導により助かったとか、道真が太宰府で神事を行っていたときにクマバチの大群が来て難渋していたところ、ウソの群れがクマバチを食べて災難を救ったなどと伝わっています。ウソを漢字で表すと「鷽」、また学問の学の字を昔の表記で表すと「學」で、學の下の部分の「子」が「鳥」に変わって鳥のウソになることなどを考えると、このような字面が鳥のウソと道真を結びつけたのかも知れません。
【2003年1月21日(火)】
○トラツグミが公園の雑木林で二日間連続して同じ場所で目撃されています。虎に似た黒褐色の班模様のある雌雄同色の鳥で、日本にいるツグミの仲間では最大の大きさで、キジバトよりも少し小さく全長30cmぐらいあります。主に夜間に鳴くことが多く、「ヒョー、ヒョー」と人が鳴くような不気味な鳴き声を出します。別名ヌエといい、ヌエといえば悲劇の武将源三位頼政のヌエ退治を思い出させます。平安時代、夜中に紫宸殿の屋根から不気味な声がし、近衛天皇はその不気味な声を聞いて病が重くなったので、頼政がその怪物を退治したと「平家物語」に出ており、その怪物がヌエであると記されています。
【2003年1月18日(土)】
○センターのビオトープ見本園の水路の中には、トンボのヤゴが落ち葉の下にたくさん隠れています。網ですくって見たところ、5pぐらいに成長したクロスジギンヤンマのヤゴが1匹、3pから1.5pぐらいに成長したヤブヤンマのヤゴが12匹、2pぐらいに育ったマルタンヤンマのヤゴが2匹確認できました。半月前はクロイトトンボやアジアイトトンボのヤゴも見つかりましたが今日はいません。クロスジギンヤンマは4月から5月にかけて羽化するのでヤゴが大きく育っており、ヤブヤンマは5月から9月にかけて羽化するのでヤゴの大きさがまちまちになっています。トンボのヤゴは共食いをし、小さなヤゴは大きく育ったヤゴのエサになってしまうので、羽化できるトンボはかなり少なくなります。
【2003年1月16日(木)】
○つやのある緑色の葉を付けたマサキの生垣が、センター2階からの高尾の池の眺めを遮るように繁っており、そのマサキに小さな朱色の実が沢山付いています。この朱色の実を求めて毎日のようにキジバトやヒヨドリが訪れています。また、シジュウカラやルリビタキ、メジロ、エナガもマサキの実をついばんでいます。植物の実が赤や黄色、紫と色づくのは種子を動物に運んでもらうためだといわれています。植物は種をより遠くへ運んでもらうためいろいろな工夫をしていますが、その中に動物に食べてもらうという方法があります。そのため実には美味しくて栄養がある部分と、堅くて食べても消化しない部分とから出来ていて、堅くて消化しない部分(種子)は排泄された場所で新しい芽を出します。
【2003年1月13日(月)】
○12日の日曜日の午後4時過ぎ、センター2階の観察ロビーから高尾の池に来ているアオサギに望遠鏡の焦点を合わせると、10p以上もあるウシガエルを飲みこもうとしているところでした。何回もクチバシにくわえ直して飲み込もうとしていましたが、ウシガエルがあまりにも大きすぎてうまくいきません。30分ぐらい繰り返していましたがうまく飲み込めず最後はあきらめてウシガエルを捨てて飛んでいってしまいました。冬眠中のウシガエルにとっては大変な災難で、たたき起こされた上に鋭いクチバシでさんざん突かれたので死んでしまったかも知れません。
【2003年1月11日(土)】
○年末からの寒波もようやくゆるみ、今年になってはじめて高尾の池の氷が溶けだし水面が現れたので、どこかへ避難していたカモ類が戻ってきました。コガモが90羽、マガモが26羽、それに不釣り合いなほど大きなクチバシをしたハシビロガモが1羽、朝の観察で確認できました。コガモは日本へ渡ってくるカモの中で最も小さいカモなのでコガモ、マガモはカモを代表する最も一般的なカモなのでマガモ、ハシビロガモは大きくて巾の広いくちばしを持っているのでハシビロガモと、カモの名前は見たままをそのままネーミングしたものが多いようです。「たわたわとうすら氷(ひ)にのる鴨の脚 松村蒼石」
【2003年1月9日(木)】
○新年早々、公園にバードウォッチングに来る人のお目当てはカヤクグリのようです。カヤクグリは黒褐色の雌雄同色の地味な色で大きさはスズメよりやや小さいぐらいの鳥ですが、夏には高山で玉を転がすような美しい声で鳴きます。夏の繁殖期は、中部山岳地方の標高2000m以上のハイマツやシャクナゲが生い茂った場所や沢沿いの藪の中で暮らし、冬は低山や丘陵地の雑木林へ下りてきて、この公園では高尾の森に住みついているようです。日本でしか見ることの出来ない約20種類の鳥の固有種がいますが、カヤクグリはその固有種の中の1種です。
【2003年1月7日(火)】
○今日は「七草」で「人日(じんじつ)の節句」です。人日とは「人の日」ということで、古代中国では元旦から獣畜を当てはめて占う風習があり、七日目に人を占ったのでその日を人日といったといわれています。また、日本では813年嵯峨天皇に若菜の御膳を奉納したことから「若菜膳」が宮中の年中行事になり、中国の風習と合体して江戸時代に公式の行事になりました。一方、春の七草は鎌倉時代の1360年代に成立した「河海抄(かかいしょう)」に「芹、なづな、御形、はくべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種」の記載があることから、この頃成立したのではないかといわれています。
【2003年1月4日(土)】
○朝、センターに来て驚きました。なんと公園の北里の森の木々の枝がクリスタルのガラス細工のように、太陽の光を受けてきらきら輝いているのです。また、高尾の池は全面凍結した上にザラメ状の白い雪が積もり、その雪の上を何かの動物が池を一直線に横切った足跡が付いていました。10時を過ぎる頃から木々に付いている氷は溶けだし、小さなガラス細工を砕くような音が森じゅうでし出して、枝に付いた氷が溶けたしずくと共に落下し、正午ぐらいにはいつもの北里の森の風景に戻りました。木々の枝に氷が付いた原因は急激に冷やされ過冷却となった雨滴が、氷になって硬く木の枝を包み込む「雨氷(うひょう)現象」によるものと考えられ、平野部で希な気象現象がおきたものと思われます。
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