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北本自然観察公園 自然観察記録 2002年12月 |
2003年2月8日更新
埼玉県自然学習センター
【2002年12月28日(土)】
○今年は公園のエドヒガンが3月13日と例年になく早く咲き出し、その後も10月までは平均気温は高く、冬鳥の到来も遅れ気味で心配していました。いつの間にかルリビタキやベニマシコ、ミヤマホオジロなどの公園に来る冬鳥が揃ってしまいました。この冬は日本近海の海水温が例年よりも早く低下しているといわれているので、ひさびさの寒い冬になるかも知れません。
○今年のセンターの開館は今日までで、明日から1月3日までの年末年始の休館に入り、新年は4日から開館します。いつもセンターを御利用いただき有り難うございます。来年も旧年同様センターの御利用を職員一同お待ち申し上げております。「年暮るる野に忘られしもの満てり 飯田蛇笏」
【2002年12月26日(木)】
○今年の公園では冬鳥のアトリが50羽近く群れているところを目撃されました。アトリの当たり年のようです。日本に来るアトリは、日本海をひと飛びして上越の国境を越えて渡来するルートと、北の国から島伝いに来て公園にたどりつくルートの2コースがあるといわれています。アトリはのど、胸、脇は橙色で、飛び立つとき尾から背にかけて白く目立つ部分が見られます。アトリに引き替え、昔、公園にたくさんいたヤマガラは、今年は10月の末から11月の初めにかけてほんの一時期目撃されたのみで、それ以降の目撃情報は入っていません。
【2002年12月23日(月)】
○高尾の森で、春先には長い毛に覆われた新葉を情け無い姿でだらりと垂れ下げていた一本のシロダモが、みどりの葉の間に赤いきれいな実を多数付ける季節になりました。シロダモは雌雄異株の樹木で、花が咲いてから赤い実がなるには丸一年かかります。葉の裏面は蝋質におおわれて粉白色をしているので、シロダモの名が付いたといわれ、かつてはロウソクの原料として利用された時もありました。また、作家の志賀直哉がシロダモの葡萄杢で作られたインク壺を愛用していたことが知られています。
【2002年12月21日(土)】
○センター付近の公園の一角に沢山植わっていたイチョウを、今日の「里山ボランティア」で間伐しました。おそらく歩道か公園に植えるために苗木を育てていたのが使われないまま成長したものと思われます。イチョウは恐竜時代の生き残りの樹木だといわれ、中国で絶滅を逃れ日本へ平安時代に渡来し、今では全国各地にイチョウの巨樹がみられます。しかし、巨樹になるのはほとんどが雄株で、雌株は銀杏(ギンナン)に養分を取られ巨樹になれないものと思われます。また、「イチョウは火がくると水を吹く」といわれ、火災を防ぐためお寺の本堂の横や神社の境内などによく植えられています。
【2002年12月19日(木)】
○公園でお馴染みのシジュウカラが、十数羽で木の枝や幹に止まりながら「ツピ、ツピ」と鳴いていました。よく見るとシジュウカラの群れに混ざって少し大きめでシマシマ模様の1羽のコゲラが、木の幹を叩きながら垂直に登っていきました。この公園では秋から冬にかけてシジュウカラの群れにコゲラやエナガなどが混じった混群がよく見られるようになります。混群によって違う種類の鳥が一緒にいれば単一の群れよりも危険などを察知する効果は大きく、しかも餌の取り方や利用する方法が違う鳥同士の混群なので、餌の取り合いなどの争いにもなりません。
【2002年12月17日(火)】
○ふれあい橋の北側に枯れ木の中に白っぽい薄い葉っぱを多数付けたような格好をした高木があります。今日のように北からの強風が吹く日には、この木についている白っぽいひらひらした薄い葉っぱが多数くるくると回りながら落ちてきています。手に取ると落ちてきたのは葉っぱではなく、中央に一つの種がある楕円形の翼を持ったシンジュ(ニワウルシ)の果実です。シンジュは中国原産の落葉樹で、日本へは明治10年頃渡来し、西洋の俗名を直訳してシンジュと命名されたといわれています。
【2002年12月14日(土)】
○細かいまだら模様のある暗褐色のクサギカメムシが、センターの事務室や展示室の窓側のアルミサッシュの隙間などで越冬するためにきています。また、床下に落ちて死んでいるクサギカメムシも時々見つかります。越冬するカメムシが多い年は大雪の年と昔から全国各地で言い伝えられています。カメムシの多くは農作物の害虫として知られており、しかも悪臭を放つことから一般的には嫌われていますが、近年音を出して個体間のコミュニケーションを図っているカメムシが見つかるなど、少しずつカメムシの生態が明らかにされています。
【2002年12月12日(木)】
○県の農林総合研究センター水産支所で増殖した上尾産のホトケドジョウの稚魚500匹ほどを、ふれあい橋北側の水路に放流しました。ホトケドジョウはレッドデータブックにも掲載されている種で、全国的にも少なくなっています。この公園にもかつては棲んでいましたが、今は絶滅状態になっています。この放流によって野生のホトケドジョウを増やし、少しでも昔の里山の生態系に近づけようとの試みです。ホトケドジョウは小型で細長く円筒形をした日本固有種のドジョウで、4対8本の髭があります。低い山から平地にかけての湧き水のある流れの緩やかな小川や河川の小さな支流域に棲息し、河川本流域に現れることはまれです。
【2002年12月10日(火)】
○8日の月曜日に雪が降り10p近く積もりました。園路の雪はだいぶ消えていましたが、草原の枯れ葉の上や雑木林の木の枝や下草の上には真っ白いきれいな雪が残っています。「雪月花の時、最も友を思う」と白氏文集を引用して、川端康成がノーベル賞受賞講演「美しい日本の私」を行っています。日本人は雪の美しさを見るにつけ、月の美しさを見るにつけ、すなわち四季折々の美しい自然に接すると、この美しさに接した喜びを親しい友と分かち合いたいと願う、つまり、美の感動が人への思いやりの心を誘い出すという美意識の伝統を持っています。
【2002年12月7日(土)】
○12月5日(木)にコイやカムルチー(雷魚)を高尾の池から除去するため池のかいぼりをしました。その結果全長47.5p、重さ1.75sと全長41p、重さ1.15sのコイ2匹、全長70p、重さ3.25sと全長45p、重さ0.65sのカルムチー2匹を捕獲しました。そのほかギンブナ、オイカワ、モツゴ、トウヨシノボリ、ウシガエルなどが確認できました。また、殻長21pと22p重さが1s以上のドブガイもいました。
【2002年12月5日(木)】
○数十匹のナミテントウが、センター2階のエレベーター脇の白壁に取りついていました。毎年初冬の気温が20度近くになった日に、申し合わせたようにこの白壁に集まってきます。集まっているナミテントウは、二紋型が多く四紋型がちらほら混ざっていました。広いこの公園の中でバラバラになって暮らしていたナミテントウが、何に誘われて毎年一定の場所に集まるようなるのかは不明ですが、このあと集団で地下に潜って冬を越します。
【2002年12月3日(火)】
○スズメよりも少し大きめの鳥で、頭が大きく体全体が丸みを帯びていて、くちばしが太くて大きい、太っちょのシメが公園に下りてきています。体の色は全体に茶色で羽の一部は濃茶色、腹は薄茶色で顔を正面から見ると歌舞伎の「暫(しばらく)」の主役の鎌倉権五郎の顔の隈取りを彷彿とさせます。渡りの時は小さな群れを作ることもありますが、公園では単独で行動することが多く、地鳴きの声がシーと聞こえるので、シーと鳴いて可愛い(メンコイ)小鳥なので「シメ」といわれています。また、木の実(豆)を好んで食べる鳥なので別名マメドリやマメワリの名もあります。
【2002年12月1日(日)】
○この公園を利用して2ヶ月に1回の割合で探鳥会を開いている団体があります。今日はその探鳥会の成果を教えていただきました。以下の33種です。カワウ、アオサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、キジ、バン、キジバト、カワセミ、アカゲラ、コゲラ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ルリビタキ、ジョウビタキ、アカハラ、ツグミ、ウグイス、ヒガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、アトリ、カワラヒワ、シメ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。
○今日から師走になりました。この自然観察記録も次回から春先まで週3回になります。
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