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北本自然観察公園 自然観察記録 2002年9月 |
2002年10月25日更新
埼玉県自然学習センター
【2002年9月29日(日)】
○黄色の花のノアズキや紅紫色の花のツルマメに替わって、紫色のヤブマメの花が公園の園路端や雑木林の脇で咲いています。ヤブマメとは藪に生えるマメという意味でしょうが、花のあとに付ける扁平な果実はさやの中に3〜5個あり、大きさは3.5oぐらいで黒い斑点が付いています。しかし、これとは別に茎の根元から出る細い地下茎が地中にもぐって閉鎖花を付け、地上に出来る果実より大きい1p弱の丸い果実を1個だけ実らせます。ヤブマメは地上にも地下にも果実を付ける変わった性質を持つ植物といえます。
【2002年9月28日(土)】
○今日は「手作り実験教室」の第3回「ドングリお料理教室」を行いました。公園内でコナラとクヌギを拾ったあと、マテバシイやスダジイと共に炒って味見、おみやげやさんで「ドングリ」と称して売っていたヘーゼルナッツの味と比べました。もちろん、コナラとクヌギは「まず〜い」。その後、クヌギとマテバシイ、スダジイをクッキーやせんべいにしました。見た目は悪いけれど、けっこうおいしくできました。今年の公園内は、コナラが不作。去年はクヌギが不作でした。不作の年があることで、ドングリを食べてしまう動物たちが増えすぎないようにしているのではないかといわれています。
【2002年9月27日(金)】
○ミゾソバ、ママコノシリヌグイ、アキノウナギツカミの3種類の同じような花が公園で咲き揃っています。すべてタデ科の植物で薄いピンク色の金平糖のような花を咲かせており、お互いに区別するのはむずかしい植物です。ミゾソバは葉の形がソバの葉に似ていて溝などの湿ったところを好むので名付けられたといわれている一方、葉の形が牛の頭にも似ているためウシノヒタイとも呼ばれています。アキノウナギツカミの葉は矢じり形で茎を抱いています。ママコノシリヌグイの葉は三角形で茎を抱いていませんし、茎に付いている下向きの刺が一番強烈です。公園に出て3種類の花を探してみてはいかがでしょうか。
【2002年9月26日(木)】
○この公園にいるイナゴは尻の先がわずかにはみ出すコバネイナゴでススキの葉などを食べています。イナゴは人が近づくと、後足に力を込めていつでも逃げ出せるように身構えたり、止まっている茎や葉の裏側へくるりと回り身を隠したりして、愛嬌のある行動をします。しかも、イナゴの翅は無用の長物で、翅があってもこれで空中を飛行することはできず、後足で跳ね上がることが唯一のイナゴの飛行手段です。もともとイナゴは湿地を好みアシの茂みなどに棲んでいたのが、水田ができるとともに水田に棲みかを移動させたといわれ、イナゴとは稲の子という意味ですが、稲の葉を食べるだけで茎は食べません。また、中国でトノサマバッタを指す「蝗」の字を日本ではイナゴに当ててしまったために、イナゴは稲の害虫としての汚名をトノサマバッタの分まで背負うことになってしまいました。
【2002年9月25日(水)】
○エドヒガン付近の草原にギザギザの大きい葉をつけ、3mを越える茎の先端に、葉の大きさの割には小さな紅紫色の花を沢山付けたタカアザミが、お辞儀をするように花を下向きに咲せています。日本にはアザミが70種類ぐらいありますが、その中で唯一の二年草のアザミです。アザミは古くは刺草(しさう)と呼ばれて、棘のあるのが嫌われ古歌や物語にはほとんど登場しなかったのが、江戸時代になるとアザミの花の美しさが見直され、陶磁器や友禅染の模様などに頻繁に使われだし身近な草花になっていきました。近年では陶芸家の富本憲吉氏が絵皿などに好んで用いた模様として知られています。
【2002年9月23日(月)】
○公園の至る所で秋を彩るツリフネソウが、長さ3〜4pぐらいの赤紫色の花を咲かせています。花の形が帆掛船を釣り上げたように見えるのでその名前がありますが、ツリフネソウの花をよく見ると、花びらに小さな黒い傷が付いているのがあります。この花の前面は大きく口を開けた袋状になっており、袋の奥は急に細くなって渦を巻いた管になっています。この奥の管の中にある蜜を求めてマルハナバチなどが来ますが、ハチは花への出入りの際に花びらに爪をかけるので、しばらくするとその爪痕が黒く変色して傷になってしまいます。この黒い傷こそツリフネソウにとっては、受粉して子孫を残せた証拠なのです。
【2002年9月22日(日)】
○エンマコオロギの鳴き声が夕方ごろからアオマツムシの鳴き声に混ざって聞こえます。コオロギを漢字で表すと「蟋蟀」で、音読みすると「シッシュツ」となり、これは翅をすり合わせる音を表す擬声語です。今のコオロギを万葉の時代はキリギリスと呼び、「蟋蟀」の字を当てていましたが、江戸時代の国学者賀茂真淵により現在の呼び名に改められたといわれています。エンマコオロギのオスは縄張りを持っており、別のオスが縄張りを犯すと「争い鳴き」といわれている「キリ、キリッ」と鳴いて争いの宣言をし、頭と頭をくっつけ合って押し合います。押し負けた方が通常退散し、噛みつき合いには滅多になりません。そのほか鳴きの種類としては、メスを呼ぶ「さそい鳴き」と縄張り宣言の「ひとり鳴き」が知られています。
【2002年9月21日(土)】
○今日は仲秋の名月で、イベント「秋の虫の観賞会」です。名月は雲に隠れて時々見える程度の朧月夜でしたが、公園の夜は鳴く虫のオンパレードといった感じでした。一番よく聞こえたのは樹上の方から外来種のアオマツムシでしたが、その他ツヅレサセコオロギ、エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、ヒメコオロギ、カンタン、クビキリギス、クサヒバリ、ササキリ、オナガササキリ、シブイロカヤキリモドキ、セスジツユムシ、ハヤシノウマオイ、シバスズ、ケラといった秋の虫が鳴いていました。また、近頃少なくなったクツワムシの鳴き声も聞かれました。
【2002年9月20日(金)】
○雑木林の梢でキィー、キィー、キチキチキチと空気をつんざく鋭い声で鳴く、モズの高鳴きが聞こえてきました。このモズの声が聞こえてから七十五日目に霜が降るという言い伝えがあるほか、モズはいろいろな鳥の鳴き真似をすることから、「百舌」と名付けられたといわれています。そして捕らえた獲物を小枝などに刺しておく習性があり、これを「モズのはやにえ」といい、冬に備えての食糧の備蓄であるという説がありますが、はっきりしたことはわかっていません。また、唐の中宗のむすめ安楽公主がモズの毛で織った「裙(くん)」という衣のすそを作らせ、流行になったという記録があります。
【2002年9月19日(木)】
○公園の秋を強烈に演出する真赤な花のヒガンバナが、園路のあちらこちらで花を咲かせ始めました。子供の頃、ヒガンバナを家に持ち帰ると家が火事になるといわれましたが、真っ赤な花の色が火を連想させたのでしょう。別名曼珠沙華といわれ有毒な植物ですが、球根を水でさらして毒を抜くと食用になることから、飢饉の時の救荒植物として中国から渡来したあと、畑のあぜ道や土手に植えられ野生化したものと考えられます。日本のヒガンバナの大部分は三倍体なので種子はできないで球根でふえます。また、花のあと葉が出てきて3月頃まで群生して枯れます。
【2002年9月18日(水)】
○急に涼しくなったと思ったら、日本固有種のヤマジノホトトギスが北里の森などの園路沿いで一斉に咲き出しました。白色の花を茎の先や葉の付け根に1〜2個付け、花は3分の1ぐらいのところで折れて水平に開き二段構えになりますが、ヤマホトトギスのように反転はしません。花の折れた部分のすぐ下に大きな紫色の斑点が通常あるはずですが、今年のヤマジノホトトギスの咲き始めの花は、白色だけで紫色の斑点はよく見れば見える程度でした。ヤマジとは山路、すなわち山道のことで、秋の山道でよく出会うホトトギスの花ということで名付けられたといわれています。
【2002年9月16日(月)】
○黄色と緑青色の荒い横縞のあるジョロウグモが園内で目立ってきました。このクモは金色に光る糸を地面に対して垂直に馬蹄形になるように網を張り、しかもその網の前後や上部に迷網と呼ばれている不規則な糸を張って網は二重になっています。網の中にはオス、メスが同居しており、網の中央にいる大きいのがメスで、その半分ぐらいの大きさで網の端の方にいるのがオスです。オスを複数従えていることもよくあります。ジョロウグモは獲物が網にかかると糸をはき出すような攻撃は全く行わずに噛み付いて獲物を捕らえます。
【2002年9月15日(日)】
○短命ながら花期が長い花のツユクサが、園内のあちらこちらで2pぐらいの青色の花を咲かせています。花弁は3枚で、上方に大きくてよく目立つ青色の2枚、下方に小さくて目立たない無色の1枚からなっていて、その裏に無色のガクが3枚ついています。早朝に開花して午後には萎んでしまいます。ツユクサの色素は水に浸すと跡形もなく消えてしまうので、友禅染の下絵を描くのに用いられ、滋賀県の草津市がその染料の唯一の産地として知られています。
【2002年9月14日(土)】
○この公園ではモンシロチョウとスジグロシロチョウが混在して棲息しています。一般にモンシロチョウは日の当たる明るい場所の畑や草原に多く、スジグロシロチョウは半日陰の木の茂みの多い場所に棲んでいます。しかし、この公園のように草原や雑木林が隣接している場所では、両者が入り乱れて飛ぶ姿がしばしば見られます。また、食草にしてもモンシロチョウの幼虫はキャベツ、ダイコン、カラシナなどの栽培されているアブラナ科の植物を好み、スジグロシロチョウの幼虫はイヌガラシ、タネツケバナなどの野生のアブラナ科の植物を好みます。
【2002年9月13日(金)】
○コガモと一緒に渡ってきたのでしょうか。コガモよりも顔の白線が目立つ旅鳥のシマアジが1羽、高尾の池で羽を休めていました。シマアジは2〜3日ここに滞在するだけでさらに南を目指して飛び去ってしまいますが、この時期のシマアジの姿格好はコガモとそっくりなので、見逃してしまうことも多いと思われます。
【2002年9月12日(木)】
○公園の秋を彩るツリフネソウやヒガンバナの花が咲き出しました。広い公園の中でほんのわずかな数の開花ですので、公園のあちらこちらで咲き出すにはまだ1週間以上はかかるのではないかと思われます。ヤマジノホトトギスもつぼみを持ち上げてきたので、まもなく白色の中に紫色の斑点のある花に巡り会えるものと思われます。総じて今年の公園の秋の花の開花は、去年よりも遅れ気味になってきています。
【2002年9月11日(水)】
○花の形がどことなくたばこのパイプに似ていて、葉や葉緑素を持たない寄生植物のナンバンギセルが、淡紫色の花を横向きに咲かせています。以前は公園の2カ所で咲いていましたが、今は1カ所のみになってしまいました。ナンバンギセルはススキやミョウガに寄生することがよく知られていますが、この公園ではオオバジャノヒゲに寄生しています。古くは「おもひぐさ」といわれ、「万葉集」には「道の辺の尾花が下の思ひ草今更々に何をか思はむ」の歌が知られています。
【2002年9月10日(火)】
○高尾の森ではヤマハギが咲いています。ハギは秋の七草の筆頭で「万葉集」で一番多く詠まれている植物として知られています。また、古代のハギは特定の種をいうのではなく、ヤマハギあるいはそれに似た蝶形の小さな花をたくさんつけて、葉は三個の小葉からなる植物の総称であったといわれています。ハギは日本人によほど好まれていたとみえて、「万葉集」以降の「古今和歌集」「新古今和歌集」をはじめ、「源氏物語」や「枕草子」などにも頻繁に登場しますし、江戸時代になると四季の草花を描いた絵画や工芸品には必ずといってよいほどハギの花が描かれています。また、秋のお彼岸に食べる「おはぎ」は、ハギの実を粉にしてクリと混ぜて餅にして作ったので、「おはぎ」といわれているそうです。
【2002年9月8日(日)】
○例年通りコガモの第一陣が5羽、高尾の池に降りているのが観察されました。去年よりも1日遅い到来です。冬鳥として渡ってきたばかりのコガモは、オスもメスと同じような羽色をしていて区別するのは難しいのですが、寒さが加わるに従ってオスは頭部が茶褐色で目の周りから後頸にかけて緑色になり、容易に区別ができるようになります。日本で棲息するカモの中で最も小さな水面採餌カモで、翌年の5月頃までこの公園に滞在し多いときは200羽以上にもなります。
○また、今日は南方系のチョウであるクロコノマチョウの夏型と秋型が公園で採集できました。クロコノマチョウはことによると公園付近で繁殖しているのかも知れません。
【2002年9月7日(土)】
○一般に野菊といわれているカントウヨメナも園路端で咲いています。雑草の中から薄い淡紫色のカントウヨメナの花を見ると、その美しさと共に秋を感じさせます。ヨメナは「万葉集」には「うはぎ」の名で2首登場しますが、若芽を食することを歌っているだけで、花に関しては歌っていません。近代文学の名作といわれる伊藤左千夫の「野菊の墓」の「野菊」の種類は、具体的に示されていませんがカントウヨメナだったかも知れません。また、ヨメナはムコナ(シラヤマギク)に対してつけられた名前で、若芽を食用にすると最も美味しいということで名付けられたといわれています。
【2002年9月6日(金)】
○センター二階観察ロビー下の池側の枯れかかったアカメガシワの木と、近くのヌルデの木に40数羽のゴイサギの群れが来ていました。大部分は今年生まれの幼鳥のようですが、これだけの数のゴイサギが2本の木の上に群れていると、小さな鷺山のような感じがします。この鳥はおもに夜間活動することから「夜」とか「逃走」とかいう意味の隠語に使われたりしますし、また結婚してもすぐに嫁が実家に逃げ帰ってしまうことを「五位鷺の嫁入り」といわれています。
【2002年9月5日(木)】
○高尾の池に白鷺(はくろ)がよく舞い降りるようになったと思ったら、二十四節季の一つの白露(9月8日)が近づいていました。今日の白鷺はクチバシが黄色で、足が黒いダイサギで、日本で見られるシラサギの中では最も大型のサギです。日本で通常見られるシラサギはコサギ、チュウサギ、ダイサギ、アマサギの4種類です。いずれも似たような場所で繁殖し、似たような声で鳴きますが、一般にコサギは小川、チュウサギは田んぼや湿地、ダイサギは池などのやや深いところ、アマサギはあぜ道などで餌を採り、微妙に生活の場所を変えてうまく棲み分けています。
【2002年9月4日(水)】
○公園のカブトムシやクワガタ類は毎年減っており、昔から公園を利用している人が「センターが開設された10年前には至る所にいたのだが」と、言っていました。カブトムシやクワガタ類はクヌギの樹液に集まりますが、クヌギが樹液を出すのは、シロスジカミキリがクヌギに産卵し、樹皮を傷つけるからであり、その産卵した場所や幼虫が堀った樹の穴から樹液が染み出します。しかしクヌギが大きくなると樹皮も厚くなるので産卵が難しくなり、また、下草が茂ると幹の根元辺りに産卵するシロスジカミキリは、下草に阻まれ近づけなくなります。公園の雑木林が手入れされなくなって久しく、「風が吹けば桶屋が儲かる」といわれているように、回りまわってカブトムシやクワガタが公園から姿を消しつつあると言うことがいえます。
【2002年9月3日(火)】
○まだ、茹だるような暑さが続いていますが、公園には秋に咲く赤紫や青色の花が目立ってきました。赤紫や青色系統の花はツリガネニンジン、ナンバンギセル、ツルマメ、ヌスビトハギ、ミゾソバ、ママコノシリヌグイ、イヌタデ、ハナタデ、ミズヒキ、コバギボウシなどの他、黄色系統の花はノアズキ、アキカラマツ、アキノノゲシ、カラムシ、イタドリ、ヤブガラシ、キンミズヒキ、キツリフネ、ヤブタバコなど、白色系統の花はシラヤマギク、カントウヨメナ、コウヤボウキ、ミズタマソウ、ヒヨドリジョウゴ、センニンソウなどで、公園をよく観察すれば60種以上の花を見ることができます。
【2002年9月1日(日)】
○小さな花を密集させた穂から淡い紅紫色の小さな花冠が1つか2つ飛び出している一年草のキツネノマゴが、草原脇やあずま屋付近で咲いていました。飛び出した花冠は長さ1p弱ぐらいの唇形をしています。植物の名前で動物の名前を頭に付けた植物はイヌ、クマ、ウシについでキツネは4番目に多いといわれていますが、何故にこの植物が「キツネの孫」と名付けられたかはよくわかっていません。
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