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北本自然観察公園 自然観察記録 2002年1月 |
2002年3月1日更新
埼玉県自然学習センター
【2002年1月31日(木)】
○公園のハンノキが黄褐色の長く垂れ下がった尻尾のような花を咲かせています。ハンノキの花は風媒花で長さ5pから10pぐらいの穂を下げ、風に揺れている雄花の付け根あたりに、1個か2個の赤紫色の雌花を付けています。ハンノキの花が葉よりも先に花を咲かせるのは、葉が花粉を運ぶ風の障害になるからで、葉が開く2ヶ月も前に花を咲かせます。また、ハンノキには埼玉県の蝶の「ミドリシジミ」が生息しており、「ハンノキとミドリシジミの四季」という常設展示を当センターで行っています。
【2002年1月29日(火)】
○園内の枯れ葉をかさこそと突っきながら餌の昆虫を探している、ルリビタキのオスが1羽見られました。ルリビタキは瑠璃色をしたヒタキという意味で、オスは頭から尾にかけての背面が美しいルリ色の鳥で、夏の繁殖期は1500mぐらいの亜高山帯で過ごし、秋が深まると共にこの公園などの、越冬する昆虫の多い郊外の雑木林に下りてきます。野鳥としては人なつこい鳥で、冬にこの公園で見られるベニマシコと共に最も人気のある鳥の一種です。
【2002年1月26日(土)】
○今日は里山管理体験講座で高尾の森の雑木林伐採地の萌芽整理を行いました。雑木林のコナラやエゴノキなどを伐採すると、その切り口からたくさんの芽(萌芽)が出てきます。多いと1株から20本くらい出てきますが、この数を減らしてやることで早く「雑木林」に戻すことができます。この作業を萌芽整理といい、伐採してから2〜3年目くらいに行います。調査をしながらの作業なので、ちょっと時間がかかりましたが、伐採地の5分の2くらいの作業が終わりました。伐採時の樹齢が高かったせいもあって、コナラは萌芽していない切り株もありましたが、ドングリから出てきた稚樹もあるので、ちゃんと雑木林に戻りそうです。
○ウサギの糞も見つかりました。ノウサギかどうかはわかりませんが、伐採地が大好きな動物です。整理した萌芽に目をやるとアブラムシやカミキリムシの仲間がとまっていました。そのほか、切り株の樹皮下には小さな甲虫が潜って越冬していました。
【2002年1月24日(木)】
○冬の園内でキセキレイを見ることができます。通年見られるハクセキレイ、セグロセキレイと合わせて代表的な三種類のセキレイがこの公園で観察できます。セキレイはスマートな体に長い尾があり、その尾を上下に振っては鳴いて飛び上がります。江戸時代に江戸市中をこん棒を振り回しながら我が物顔で徘徊し狼藉を働く旗本・御家人の不良子息の集団を、市民は「鶺鴒隊(せきわいたい)」と呼んで揶揄していました。振り回すこん棒をセキレイの尾に見立てての呼び名です。また、戦国の武将伊達政宗が鶺鴒型の花押を使っていたことはよく知られています。
【2002年1月22日(火)】
○昨日の午後は風雨が激しく、この時期としてはめずらしく雷鳴がとどろきイナズマが上空を走りました。イナズマとは「稲の夫(ツマ)」という意味です。刺身に添える大根を「刺身のツマ」というように、日本語で「ツマ」というと相手のことを指します。カミナリ様の光、イナズマは稲を実らせる(妊娠させる)夫(ツマ)という意味で、奈良時代に名付けられたといわれています。事実、落雷した場所の方が稲の実りが多いという話しも聞いています。
【2002年1月19日(土)】
○一年で最も寒い「寒の入り」というのに、園内の陽だまりには青紫色の星のかけらのような可憐な花を付けた、オオイヌノフグリが咲き出しています。明治初期にヨーロッパから入ってきた帰化植物で、花びらは四枚に深く切れ込んでいる平たい花ですが、夕方には花を閉じてしまいます。このオオイヌノフグリという変わった名前は、命名者の観察の目が、美しい小さな花を見ないで花の後にできる実の特徴に注がれたためと思われます。
【2002年1月17日(木)】
○昨日から、センターの西側の一画で、クワの木の伐採・伐根の作業を実施しています。この公園がオープンしてから約10年の間に、公園内ではクワの木が急速に大きくなり、数も増えてしまいました。一部区域ではクワの単純な林になりはじめ、実が熟す時期にはカラスが多数集まってしまいます。そのため、今回、この一画でクワの木の伐採・伐根を行っています。伐採跡地には、コナラ等の苗木を植え、将来は雑木林にしていく予定ですので、ご協力下さい。
【2002年1月14日(月)】
○翼に白い斑のあるジョウビタキをよく見かけるようになりました。ジョウビタキを漢字で表すと「尉鶲」で、「尉」は能楽で老翁を表すことから転じて白髪を意味し、「鶲」は火焚き、即ち火打石を叩くような音を立てることをいいます。したがってジョウビタキは頭が白髪のように白っぽくて、火打石を叩くような鳴き声の鳥という意味です。警戒心の少ない野鳥で比較的人家のそばまで近づいてきます。
【2002年1月12日(土)】
○センターのアルミサッシの窓枠の狭い空間に、数匹のクサギカメムシが越冬していました。カメムシは秋になると家の中に進入し、悪臭を放つことから嫌われていますが、日本各地の古い言い伝えによると、越冬するカメムシの多い年の冬は大雪になるといわれています。嫌われ者のカメムシですが、キンカメムシやツノカメムシの仲間などは、美しい色彩や個性的な形態から、昆虫愛好家の収集の対象になっているものがあるほか、近年では、臭気が警報フェロモンや集合フェロモンとして重要な働きをすることが分かってくるなど、カメムシの興味深い生態が明らかになりつつあります。
【2002年1月10日(木)】
○高尾の池に通年棲息しているカワセミは、漢字で表すと「翡翠」と書き「ひすい」とも読みます。「翡」は緑色の鳥のオスを指し、「翠」はそのメスを指すといわれています。色名の翠色(みどりいろ)は青みがかった緑色のことで、大相撲の土俵で青房下には青色の房ではなく緑色の房が下がっている事からもわかるように、江戸時代の青色は今でいう緑色を指していました。また、「みどり」はカワセミの古名「そにどり」から転じたといわれ、「そにどりの」は「あお」にかかる枕詞です。
○冠羽のある美しい鳥のミヤマホオジロが高尾の森に来ています。誰が名付けたか山深い場所に住むホオジロという意味でしょうが、数は少ないが冬季は里山の林縁部近くでも活動します。
【2002年1月8日(火)】
○昨日7日は今年の五穀豊穣と無病息災を願う「七草」の日で、江戸時代に制定された五節句のひとつの「人日(じんじつ)」の日です。セリ、ナズナなどの春の七草はすべて薬効のある植物で、七草摘みの行事は古代の若菜摘みの伝統行事を受け継いでいます。戦前の日本各地には前の日に摘んだ春の七草をまな板に載せ、「七草なずな 唐土の鳥が日本の土地へ渡らぬ先に 手に摘み入れて〜」などと包丁でたたいて囃したて、粥の中に入れて食する民俗行事がありました。現在では七草粥の習慣はほとんど無くなりましたが、スーパーなどへ行くと今でもパックにつめた春の七草が売られています。
【2002年1月5日(土)】
○年末からあずま屋付近で白いスズメが頻繁に観察されています。白いスズメは鳥類の白化現象で、遺伝子の色素が欠けていることから起こる白色アルビノで、スズメのほかツバメ、ムクドリ、キジなどで起こることが知られています。この鳥類の白化現象は吉兆のしるしとされ、古文によると大化の改新の前、目出度いということで白いスズメが蘇我の入鹿に贈られたほか、聖武天皇や桓武天皇に献上された記録があります。また、穴戸(長門)の国司が白いキジを孝徳天皇に献上したことから、年号を大化から白雉に改元したほどです。
○今日は久しぶりにオオアカゲラが1羽、一夜堤付近で観察できました。
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