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北本自然観察公園 自然観察記録 2001年10月 |
2001年11月15日更新
埼玉県自然学習センター
【2001年10月31日(水)】
○丸い大きなドングリを付けるクヌギは、コナラと共に武蔵野の雑木林を代表する樹木で、ドングリが成熟するまで二年かかります。また、クヌギは古くから知られている樹木で、その名は「古事記」等に掲載されているほか、古名は「つるばみ」といって、そのまま日本の伝統色の色の名になっており、その色の衣服は古代は一般庶民の平服でしたが、平安中期ごろからは高貴な人の喪服の色として利用されるようになりました。
【2001年10月30日(火)】
○万葉集の山上憶良の歌「瓜食めば、子ども思ほゆ 栗食めば まして偲ばゆ」のクリの実も、ドングリの一種に数えられており、ドングリの中で一番食用として利用されております。以前は「勝ち栗」といって勝利を導く縁起担ぎに使われましたが、今ではあまり聞かれなくなりました。青森県の三内丸山遺跡からは、二抱えもあるクリの木の柱が六本出土しましたが、何の建物に使用されたか特定されていません。また、クリの木は材が堅いため鉄道の枕木などに使用されています。
【2001年10月28日(日)】
○今日は秋の名残のそぼ降る雨が、煙のように地上に降り注いでいます。まもなく冬の到来を告げるこの時期の秋雨は、人々の心にいいようのないわびしさを感じさせます。センター前のクスノキの木は雨にしっとりと濡れ、背後の雑木林は雨に煙っています。「楠の根をしづかにぬらす時雨かな 蕪村」
【2001年10月27日(土)】
○最近園内で生育が確認出来なかったセンブリが一株、高尾の森皆伐地の日当たりの良い草地で、星形の白い花を咲かせていました。センブリは人々に最もよく知られた薬草で、土瓶で煮詰めて、熱湯の中で千回振りだしてもまだ苦さが残るとされ、それがそのまま植物の名前になりました。用途は胃薬で消化不良や食欲不振などの家庭の常備薬として利用されていました。
【2001年10月26日(金)】
○ふれあい橋のかかっている池にヒメダカがいました。ヒメダカは、野生のメダカを観賞用に品種改良したものです。野生のメダカが黒っぽい色をしているのに対して、ヒメダカは赤っぽい色をしています。野生のメダカに混じっていたので捕獲しましたが、まだ何匹かいるかもしれません。野生のメダカとの交雑が心配されます。
【2001年10月25日(木)】
○ドングリのなる木のシイやカシは似通った木が多く、名前を特定するのは難しいのですが、マテバシイは比較的簡単に見分けられると云われています。「待てば椎」、待っていればその内シイの木になれるという訳ではありません。マテバシイのマテはマテ貝のこと。南の温暖な地方の浅い海に生息する、細長い楕円形をしたマテ貝にマテバシイの葉が似ているので名付けられました。そのドングリはシイ、カシの中では最も長くなります。
【2001年10月24日(水)】
○今日からミニ展示「ドングリころころ−ドングリの運命−」をはじめました。地面に落ちたドングリがすべて大きな木になるわけではありません。いろんな動物の食料になったり、ドングリには様々な運命が待ち受けています。そんなことを考えてもらうためのゲームも用意しました。また、公園にあるドングリなどの展示もあります。ぜひご覧ください。
【2001年10月23日(火)】
○平成12年5月の「里山を守ろう」で植菌したシイタケが、やっと出るようになりました。シイタケの菌がほだ木にうまく回っていれば、植菌してから1年半後の秋くらいから発生が始まります。10pぐらいの大きさに成長した、お化けシイタケを持ってきてくれた人もいます。皆様方のシイタケはどうなったでしょうか?
【2001年10月21日(日)】
○蒲桜方面へ行く園路のわきに、ハダカホオズキの果実が8pぐらいの大きさに成長し、紅橙色に熟して多数つり下がっています。ホオズキのように果実が袋に包まれていないので、その名がつきました。晩秋の陽を浴びて光り輝いていました。
【2001年10月20日(土)】
○今年は、クヌギのドングリが不作のようです。公園内のクヌギの下にも、虫食いのない「いいドングリ」がなかなか落ちていません。ドングリのミニ展示用に集めているのですが、クヌギはまともなドングリがなかなか拾えません。たくさん拾ったら、ぜひ少し分けてください。
【2001年10月19日(金)】
○子供公園の橋から見たヤナギの木に、山から下りてきたウソが4羽(オス1羽、メス3羽)止まっていました。ウソは学問の神様とあがめられている天神様の身代わりの鳥で、東京では亀戸天神の初天神の日には、小さな丸木のウソの置物を買い求める受験生などで大混乱を演じています。また、「ウソ」とは口笛のことで、鳴き声が口笛とそっくりなので名付けられました。
【2001年10月18日(木)】
○夕方から夜になると公園は鳴く虫の音で賑やかです。古来から日本人は秋に鳴く虫の音を楽しんできました。万葉の昔にはコオロギが鳴く虫のすべてを担っていましたが、枕草子の平安時代になるとスズムシ、マツムシ、キリギリス、ハタオリと鳴く虫を識別するようになりました。しかし、コオロギとキリギリス、マツムシとスズムシの誤用は江戸中期ぐらいまで続いたと云われています。
【2001年10月17日(水)】
○園路を歩くとトノサマバッタが、草原に入るとイナゴが飛び出す季節になりました。大量に発生し農作物を食べ尽くす害虫の飛蝗(ヒコウ)はトノサマバッタのことで、昔の子供はこのバッタを追っかけ回して遊んだものです。また、外国ではこのバッタを食する地方が多数ありますが、日本ではイナゴを佃煮にして食べています。そのほか日本で食べている虫としてはハチの子、ザザムシ(トビケラなどの幼虫)、マゴタロウムシ(ヘビトンボの幼虫)、ゲンゴロウ、タガメ、アブラゼミの幼虫、カイコの蛹などが知られています。
【2001年10月16日(火)】
○ととり粉:何のことだか分かりますか? この時期になると公園内のあちらこちらに落ちています。食べられます。さあ? 分かってきましたね。
○これはドングリをさらして粉にした物の名称です。お隣の国、韓国で作られています。他の食品などと混ぜて使用するようです。公園内にはコナラ・クヌギ・クリ・シラカシなどのドングリのなる木があります。今回、街路樹のスダジイとマテバシイを煎って食べてみました。決してまずくはないのですが、現代人の私には後味がやや気になります。機会がありましたら、是非試してみてください。
【2001年10月14日(日)】
○高尾の池ではガマの穂の白い綿毛が、風を受けて飛び交う季節になりました。アシも淡紫色の穂を付け、まもなく枯れてしまいます。有名な「稲葉の素兎」で、ウサギがガマの穂綿にくるまって直った話は、ガマの穂が止血薬として有効であることを示しています。また、古代の日本国の美称が「豊葦原」ということから、日本の国土が低湿地帯でアシの多い国だったということもわかります。
【2001年10月13日(土)】
○テングチョウが一匹、秋の陽を浴びて飛んでいました。今年の6月頃にも成虫を見ていますので、テングチョウがこの公園で生息していることが確認できたことになります。このチョウは顔面から突き出ている口ひげ(肉棒といってよい突起)が長いので、それを天狗の鼻に見立てて名前が付けられました。食樹はエノキで成虫で越冬し、春に卵を生みます。
【2001年10月12日(金)】
○水辺や湿地帯には金平糖の形のような花を咲かせているミゾソバが真盛りです。花の色は桃色から白色までありますが、この公園のミゾソバの花は白系統のようです。ミゾソバと同じような花を咲かせているアキノウナギツカミやママコノシリヌグイもまだ咲き残っています。
【2001年10月11日(木)】
○帰化植物で北アメリカ原産のセイタカアワダチソウの黄金色の花が目立ってきました。草丈が高く種子が房状に泡だって見えることから、その名が付きました。荒れ地を好み在来種を有毒物質を使って駆逐していきます。しかし、この有毒物質は自分自身にも有毒に作用するため、セイタカアワダチソウが一つの場所に長期間群落を作って生き続けることはないと云われています。
【2001年10月10日(水)】
○蒲桜方面から公園に入って左側の子供公園沿いに、ナンブアザミが茎上部の枝先や葉のわきに多数の花を付けて、紅紫色に咲いています。アザミは哀愁の花として人々に親しまれ、とくに「アザミの歌」は有名ですが、この花が秋に咲くことなどから、孤独で寂しげに感じられるのだと思われます。
【2001年10月8日(月)】
○秋の渡りの途中に寄ったのでしょうか。エゾビタキが高い梢で観察できました。また、ホトトギスの幼鳥が子犬のような鳴き声で鳴いていました。カッコウの幼鳥もいたという観察情報も寄せられています。ホトトギスとカッコウは、まもなく南の国へ渡っていきます。
【2001年10月7日(日)】
○そろそろ、ドングリの落ちる季節になりました。たくさんのドングリが落ちても、芽を出して、大きな木にまで育つのはごくわずか。ほとんどのドングリは、芽を出す前にいろんな動物の食料になってしまいます。これからの季節は、カケスやキジ、ネズミ、タヌキなどの大事な食料になります。公園内にあるドングリは、コナラ、クヌギ、シラカシがほとんどです。
【2001年10月6日(土)】
○センターの建物付近でナミヘビ科の長さ27pぐらいのヒバカリの幼蛇が見つかり、館内で水槽に入れて展示しています。名前の由来はこのヘビに咬まれたら、「命はその日ばかり」という意味だそうです。おそらくこのヘビの幼蛇をヤマカガシの幼蛇と間違えて命名したのでしょう。しかし、このヘビは無毒できわめて温和な性質のため、咬まれることすらめったにありません。
【2001年10月5日(金)】
○ツユクサも長い間次から次へと青い花を咲かせています。花が萎むと花弁はとけて無くなってしまうので、今咲き始めたように感じます。また、センター付近の園路に、南九州以南に分布するといわれるシマツユクサらしき一群も発見されました。ツユクサを見ると「四季」終刊号に掲載された、三好達治の抒情詩「かへる日もなきいにしへを こはつゆ艸の花のいろ はるかなるものみな青し 海の青はた空の青」を思い出します。
【2001年10月4日(木)】
○公園で長い間咲き続けている花に、八つ橋の池に咲くコウホネがあります。水中から突き出た茎頂に鮮やかな黄色の花を咲かせています。7月頃から咲き出して、咲いた花そのものは数日で萎んでしまいますが、次から次へと花を咲かせます。漢方名は「川骨」といい止血剤などに用いられました。
【2001年10月3日(水)】
○朝、観察ロビーから高尾の池をのぞくと、コガモが145羽以上、カルガモが11羽、アオサギとバンが1羽づつ、ゴイサギが21羽観察できました。昨日はオナガガモが1羽とマガモが3羽観察できましたが、今日は見あたりませんでした。
【2001年10月2日(火)】
○昨日は中秋の名月というのに篠突く雨が降り、お月見は出来ませんでした。しかし、天文学上の満月は今夜だそうです。暦と天体の運行はときどきこのようなズレを生じさせます。園内のススキの花も昨夜の雨露を含んでこうべを垂れていましたが、昼頃には太陽の光を浴びて金色に輝いていました。「をりとりてはらりとおもきすすきかな 蛇笏」
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